【先住民が生産するスペシャルティコーヒー】

【先住民が生産するスペシャルティコーヒー】

ロンドニア州の先住民が生産しているアマゾン・ロブスタ・コーヒーは、アマゾンを彷彿とさせる味わいがあり、近年注目を集めています。その中でも、昨年ヴァルディル・アルアーさんが生産したコーヒーは、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)の評価基準に基づき、91.75ポイントという高評価を獲得しました。(※参考:2022年までの国産コーヒーの最高評価は91.41ポイント)

アマゾン・ロブスタ・コーヒーは、リキュールのようなコクのある味わいで、リンゴのような酸味があり、アロマはフローラルです。さらにベリーやチェリー、ブルーベリー、ウィスキー、モルト、カカオ、ハチミツのパン菓子(pão de mel)、ココナッツ菓子(cocada)、ココナッツウォーター、ミルクキャラメルを感じさせる味わいです。カネフォラ種のコニロンとロブスタの自然交配から生まれましたコーヒーで、とても味わい深く、ブラジルで最も美味しいコーヒーの1つと言われるようになりました。

ロンドニア州の先住民、パイテル・スルイー族がコーヒーと出会ったのは、1969年のことでした。もともと彼らにはコーヒーを栽培する文化はありませんでした。当時、政府は土地とより良い生活環境を約束し、北部への入植を推進していました。しかしこの地域はたちまち違法伐採や採掘などが横行するようになりました。侵略者でコーヒーの木を植えた者もいましたが、コーヒーの質が悪かったため、土壌を荒廃させる結果となりました。

1976年にようやく区画整理が行われ、1983年に先住民の土地として永久に認定されました。先住民たちは荒廃した土地を再生するために植林を行い、侵略者によって残されたコーヒーを活かすため、コーヒー栽培を学び始めました。しかし前知識がなかったため、コーヒー豆は特別な処理をされることもなく、長年近隣の街へ安く売られていました。

2018年、ブラジル農牧研究公社(Embrapa)はロンドニア州のコーヒーの品質改良のため、協力および支援を始めます。アルタ・フロレスタ・ドエステ農業局(Semagri)、国立先住民保護財団(Funai)との提携の下で、3つの先住民家族とともにプロジェクトが始まりました。
研究者のエンリケ・アウヴェスは「何世紀もの間、先住民は種や果物の保存方法を学んできました。先住民の伝統には、土地と環境に対する配慮と愛情があります。その事こそが先住民が上質なコーヒーの生産者となりうる特徴です」とコメントしています。

先住民にとって親しみのないものでしたが、森林に関する知識をもとに、コーヒーにはまず日影が必要だと理解しました。カカオやナッツ、バナナ、キャッサバなどの他の作物と一緒に植え、農薬は一切使用していません。除草は機械で行い、緑肥で土壌を保護しています。小規模栽培で、農園は常に森林の端にあります。そうすることで、コーヒーは水だけでなく、森林が与えてくれる全てのものを吸収することができます。これこそ、先祖から受け継いできた先住民の知恵、アグロフォレストリーのシステムです。

2021年、スルイー族のセレステ・スルイさんは、先住民初のバリスタになりました。コーヒーの味をより理解し、革新的な淹れ方でお客さんにコーヒーを提供できるよう、2年間勉強をしました。ラペタニア村で美味しいコーヒーを提供しているセレステさんは、コーヒーを淹れながら、非先住民と接触して、事実上消滅してしまった彼女の民族の実話を語っています。

現在では、パイレル・スルイー族だけでなく、同じセテ・デ・セテンブロ先住民保護区で暮らすアルア族、アララ族、ガビオン族などもコーヒー栽培を行っており、重要な収入源となっています。

2018年、大手コーヒーメーカー3 Corações社は、セテ・デ・セテンブロ先住民保護区と提携を結び、Projetos Tribosというプロジェクトを始めました。先住民の主体性、専門性、インフラ、コーヒー加工に焦点を当てたプロジェクトです。同社は生産されたコーヒーをすべて買い取り、全国で販売しています。収益の100%が先住民に還元されます。
バジルの種でできたラベルには、先住民の公用語であるトゥピ・モンデ語で書かれたタグが付いています。

ロブスタ種に価値を見出していない人もまだ多いですが、高品質で栽培されれば、スペシャルティコーヒーとして評価されるレベルの品種です。

先住民たちはProjetos Tribosを通じて、コーヒーの品質とスコアを高めるために不可欠な要素である、コーヒーの発酵と選別を身につけています。毎年品質コンクールが開催しており、約100のエントリーある中からベスト10を表彰しています。前述のヴァルディル・アルアーさんは、昨年91.75ポイントのコーヒーで1位に輝きました。

また「非先住民」の人々の教育のツール、また持続可能な方法で森林を守る先住民の知恵を体感してもらうために観光ツアーも実施されています。
COFFEA TRIPS
https://coffeatrips.com.br/rondonia/

希少なアマゾン・ロブスタ・コーヒー、ぜひ一度試してみてください!

参考記事:
https://www.uol.com.br/ecoa/colunas/noticias-da-floresta/2023/09/26/indigenas-reflorestam-area-devastada-e-cultivam-cafe-amazonico-de-qualidade.htm
https://sebrae.com.br/sites/PortalSebrae/origens/cafe-em-grao-do-tipo-robusta-amazonico,5aac832d2b22f710VgnVCM100000d701210aRCRD
https://brasil.mongabay.com/2023/09/como-os-paiter-surui-transformaram-os-cafezais-dos-invasores-em-cafe-amazonico-de-qualidade/
https://newsrondonia.com.br/noticias/2023/03/14/indigena-surui-e-a-1-barista-do-brasil/
https://g1.globo.com/ro/rondonia/rondonia-rural/noticia/2022/12/12/indigena-valdir-arua-vence-o-concurso-tribos-2022-com-o-melhor-cafe-robusta-amazonico.ghtml

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